映画大好き美容師 松岡です。
今更ながら『三度目の殺人』を観ました。
ネタバレしますのでここから先は観た方orこの先絶対に観ないぞ、という方のみ読んで下さい。
今作のメインキャストはこの3人
この3人の演技は本当に素晴らしい。
福山さんは『そして家族になる』で演じた役と似た性格の弁護士です。
仕事に対してドライな考えを持つ福山さんが、役所広司さん演じる加害者に翻弄されて、段々と真実がわからなくなり、今までの『裁判で勝つためだけの仕事』とは違う行動に…。
役所広司さん演じる加害者は30年前に殺人を犯し、今回広瀬すずさん演じる高校生の父を殺して留置所に。
福山雅治さん演じる弁護士との面会を何度もするのですが、会う度に供述が変わる掴み所のない、それがある意味不気味に感じます。殺した事を後悔する様子は全くなくふわふわと話す姿は本当の異常者を感じさせます。
そして、被害者の娘を演じる広瀬すずさん。映画【怒り】を再び彷彿とさせる役柄に演技力。もはや脱帽、土下座で爪の垢を煎じて飲ませて頂きたい程です。
被害者の娘役なので、当然殺人犯の役所広司さんを恨んでいると思いますよね？しかし、後半から話は急展開。
広瀬すずさん演じる高校生は、殺された父親にずっと性的虐待を受けていた。役所広司さんはそれを許せなくて『私の為に父を殺してくれた』と福山雅治さんに告白します。
しかし、またしても話は急展開。
役所広司さんが『本当は私は殺していない、警察にも検察にも脅迫されて無理矢理自供させられた』と、180°証言を覆します。
福山さんは悩みますが、役所さんを信じて『殺人はしていない』と主張を変えて法廷で訴えます。
しかし、裁判の途中から主張を変えるのは裁判官や陪審員に心情は良くありません。
結果、判決は『死刑』
しかし、役所さんか殺害を否定することによって広瀬すずさんが『父親からの性的虐待』を法廷で告白せずに済むことになります。
※役所さんが殺害自体を否定したので、殺害する理由を話す意味が無くなった為。
最終的にこの一連の流れを振り返った結果、役所さんは
『広瀬すずを救いたくて殺人を犯し、その自分を救おうと法廷で父親からの虐待を証言しようとする広瀬さんを食い止める為に、急に殺人を犯してないと言い出して、結果的に自分は死刑になってもいいのでひとりの女子高生を救おうとした』
という、結果に福山雅治はたどり着きます。そして、それを役所さんに確認しに面会に向かいます。
しかし、その予想は役所さんよってに否定されます。
『何言ってるんですか？私はただの殺人犯ですよ』と。
コレっすよ。
役所さんが否定しなければ、そこで観る側が
『あぁ、役所さんそこまで悪ではなかったんだ。この映画救いもあるな』
ってなったんすよ。
でも、突き放しちゃったもんだから真実は分からず終わります。
そもそも、役所さんは殺人を犯したのか？
役所さんは虐待している父親の真実を知って、ただ『殺す理由』が出来て嬉しかっただけなのでは？
はたまた、広瀬すずを本当に救おうとして、そのことを最後まで隠す為に本心を誰にも話さなかったのか？
実は役所さんは本当に殺しておらず、殺害したのは広瀬すずさんで、自分はただ死刑になって人生を終えたかっただけなのか？
役所広司はただの狂人だったのか？
何も分からずにこの映画は終わります。
しかし、この映画の本質はそこの議論ではないと思います。
『裁くのは誰なのか？』
悪い事をしたら裁かれなければいけない。
しかし、その裁判自体、法廷で真実が解明されているのか？
そこへ、一石を投じているような気がしました。
少なくとも僕が今まで観た映画で1番【裁判の裏側】を見たような気がします。
弁護士の都合。検察官の都合。裁判官の都合。
人が人を庇い、それを人が反証し、人が人を裁くという司法の現場すらも社会としての枠組みの中にあるのかな、と感じさせられました。
こういう映画は『正解がキチンと示されない』為に悶々とするものですが、そこではないんだなと。
人それぞれの『真実』があり人それぞれの『正義』の為に戦うのが『法廷』なのかもしれませんね。
そして、タイトルの『三度目の殺人』
この映画で出てくる殺人は『役所さんが30年前に犯した殺人』と『広瀬すずさんの父親が殺された今回の殺人事件』しか【人】は死んでいません。
二回です。
しかし、【三度目】というのであれば考えられるのは『役所広司の死刑』です。
ここで、この映画のポスターを。
三人共頬に『血』が。
僕はこう考えました。
役所広司さんの血は
30年前の役所さんによる『殺人』
広瀬すずさんの血は
虐待をしてきた父親に対する『殺意』
福山雅治さんの血は
弁護士として招いてしまった役所広司さんの『死刑』
なのではないでしょうか？
『殺す』と『裁く』は何がどう違うのか？
難しすぎますね…
えらそうに長々と何様やねん。という感じですが、鬱々と考えさせられる映画でした。
観て良かったと思う映画でした。
とにかく、広瀬すずは天才。
※追記
このブログ。後から読み直すと、『なんで美容師がこんなに映画語ってんだ？』って客観的に思って、コッチのブログ書きました。
読んでやってください。
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